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東京地方裁判所 平成9年(ワ)25295号 判決

本訴原告、反訴被告(以下、単に「原告」という。) 杉浦康之

右訴訟代理人弁護士 関澤潤

同 村島俊宏

同 林賢治

本訴被告、反訴原告(以下、単に「被告」という。) 有限会社徳永商事

右代表者代表取締役 徳永森夫

右訴訟代理人弁護士 村山廣二

主文

一  被告は、原告から六六〇万円の支払いを受けるのと引換えに、原告に対し別紙物件目録記載二の建物の占有権を譲渡する旨の意思表示及び訴外千田雅昭に対し以後右建物を原告のために占有すべき旨の通知をせよ。

二  被告は、原告に対し、平成七年九月二五日から右引渡済みまで、一か月二万五一二〇円の割合による金員を支払え。

三  原告のその余の本訴請求及び被告の反訴請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、本訴、反訴を通じ、これを五分し、その一を原告の、その四を被告の各負担とする。

五  第二項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一事案の概要

本件は、本訴として、土地所有者である原告が、右土地上の借地建物の競落人である被告に対し、所有権に基づく右建物収去、右土地明渡しの請求をしたのに対し、被告が、抗弁として、賃借権譲渡の承諾等の主張をし、反訴として、仮に被告の右抗弁が認められないとすれば、原告は被告が借地権を取得できなかったことにより利得を得たとして不当利得の返還の請求をし、さらに、右抗弁及び反訴請求が認められない場合は、借地借家法一四条に基づく建物買取請求権を行使すると主張して争った事案である。

第二当事者の請求

一  本訴請求の趣旨

被告は、原告に対し、別紙物件目録記載二の建物(以下、「本件建物」という。)を収去して同目録記載一の土地(以下、「本件土地」という。)を明渡し、かつ、平成七年九月二五日から右明渡済みまで、一か月二万五一二〇円の割合による金員を支払え。

二  反訴請求の趣旨

原告は、被告に対し、二〇一八万三四五〇円及びこれに対する平成七年一一月二六日から支払済みまで、年五分割合による金員を支払え。

第三当事者の主張

一  本訴請求の原因

1  原告の父杉浦音次郎(以下、「音次郎」という。)は、西尾謙太朗(以下、「西尾」という。)に対し、昭和五七年七月一日、その所有にかかる本件土地を、地代一か月一万四九七六円、賃貸期間同日から三〇年間の約定で賃貸した(以下、右賃貸借契約に基づく右借地権を「本件借地権」という。)。

西尾は、その後、西尾晴子と共有名義で本件土地上に本件建物を建築所有し、以降本件土地を占有していた。

音次郎は、昭和六二年一一月四日死亡し、原告が相続により本件土地の所有権を取得するとともに、賃貸人たる地位を承継した。地代は、平成三年四月一日より一か月二万五一二〇円に改定された。

2  被告は、平成七年九月二五日、当庁平成四年(ケ)第二四四二号不動産競売事件で本件建物を競落してその所有権を取得し、以降本件土地を占有している。

3  本件土地の、平成七年九月二五日以降の相当賃料額は、一か月二万五一二〇円である。

4  よって、原告は被告に対し、本件土地所有権に基づき、本件建物を収去して本件土地を明渡すように求めるとともに、不法行為による損害賠償として、平成七年九月二五日から右土地明渡済みまで一か月二万五一二〇円の割合による賃料相当損害額金の支払いを求める。

二  本訴請求の原因に対する認否

認める。

三  抗弁

1  賃借権

原告は被告に対し、平成七年一〇月三日頃、皆川英久(有限会社美奈川不動産代表者)を通じて、本件借地権の西尾から被告への譲渡を承諾した。

2  譲渡許可申立期間の猶予

原告は被告に対し、平成七年一〇月三〇日頃、原告代理人関澤潤弁護士(以下、「関澤弁護士」という。)を通じて、借地借家法二〇条に基づく借地権者の承諾に代わる裁判所の許可を求める申立て(以下、「譲渡許可申立て」という。)の期間につき、法定期間を超えても協議に応じる旨の猶予を与えた。

よって、被告が右申立てをなしその裁判がなされる間、原告は被告に対し、本件建物収去土地明渡請求や、賃料相当損害金の請求をすることはできない。

3  建物買取請求権行使による同時履行(右抗弁1、2及び反訴請求が認められないときの予備的抗弁)

(一) 被告は、平成一〇年四月二〇日の本件口頭弁論期日において、被告の抗弁1及び反訴がいずれも認められないことを条件として、借地借家法一四条に基づき本件建物を時価で買い取るべきことを請求した。

(二) 本件建物の時価相当額は、次のとおり〈1〉〈2〉を合計した一八一六万一七九五円である。

〈1〉 建物価格八五一万八三五〇円

内訳 当庁平成四年(ケ)第二四四二号不動産競売事件の建物評価額

五七五万円

建物修繕費用二七六万八三五〇円

〈2〉 場所的利益九六四万三四四五円

(二四万五〇〇〇円(本件土地の一平方メートル当たりの評価額)×一一二・四六平方メートル×〇・七(借地権利割合)×〇・五(場所的利益))

(三) 被告は、原告が右代金を支払うまで、本件建物の引渡しを拒絶する。

(四) なお、被告は、千田雅昭(以下、「千田」という。)に対し、平成七年一二月一六日、本件建物を、賃料一か月一八万円、賃貸期間同日から平成九年一二月一五日まで、敷金三六万円との約定で賃貸した。

被告は、千田に対し、平成七年一二月一六日頃、本件建物を現実に引渡し、以後千田は本件建物の現実の占有を保持している。

本件建物に関する右賃貸借契約は、法定更新されている。

四  抗弁に対する認否及び主張

1  抗弁1は否認する。

2  抗弁2は否認する。

3  抗弁3(二)は争う。

被告は、本件建物に二七六万八三五〇円の費用を投じて修繕工事を行っているが、被告は、右修繕部分を原状に復した上で建物買取請求権を行使すべきであり、現状での買取請求は不適法である。

仮に、本件買取請求が適法であるとしても、本件土地には借家人千田が居住しており、同人は原告に対抗しうる借家権を有しているから、建物の時価の算定にあたっては、右借家権の存在による負担を控除すべきである。

4  抗弁3(四)は認める。

五  反訴請求の原因(本訴における被告の抗弁1、2が認められないときの予備的請求の原因)

1  被告は、本件建物の競落後、原告及び関澤弁護士に対し、本件借地権譲渡の承諾を求めたところ、同人らはこれを承諾するが如き態度を示したため、譲渡許可申立てを留保していた。そのため、右申立期間である本件建物競落日より二か月の平成七年一一月二五日が経過し、被告は取得すべき本件借地権を失った。

原告は、本件借地権の消滅により右借地権相当額の利益を不当に取得した。

2  右利得の額は、本件土地の更地価格を一平方メートル当たり三〇万円、借地権割合七割として、二三六一万円となる(一万円未満切り捨て)。

(三〇万円×一一二・四六平方メートル×〇・七=二三六一万円)

一方、被告は、本件借地権を取得できず、本件建物の収去も余儀なくされるようになったため、支払済みの本件建物競落代金一六六九万円、建物修理費用二七六万八三五〇円、建物居住者への立退料四〇万円、不動産取得税一二万一五〇〇円、登録免許税二〇万三六〇〇円、合計二〇一八万三四五〇円相当の損害を被った。

3  よって、被告は悪意の不当利得者である原告に対し、不当利得返還請求権に基づき、原告の不当利得のうち被告が被った損害に相当する額二〇一八万三四五〇円及び原告が利得した日である平成七年一一月二六日より支払済みまで、民法所定の年五分の割合による利得の支払いを求める。

六  反訴請求の原因に対する認否

1  1項のうち、被告が譲渡許可申立てをすることなく申立期間を徒過したことは認め、原告及び関澤弁護士が、借地権譲渡を承諾するような態度を示したことは否認する。

2  2項のうち、本件建物競落代金が一六六九円であったことは認め、建物修繕費用、立退料、不動産取得税、登録免許税の支払いの事実及びその額は不知。

第四当裁判所の判断

一  本訴請求の原因事実は当事者間に争いがない。

二  被告の抗弁1(賃借権)につき判断する。

甲第六号証、第七号証、乙第二号証、第四号証、第九号証、第一六号証、原告、被告代表者各本人尋問の結果によれば、被告代表者は、本件建物の競落につき特別売却方式による保証金を納付した平成七年二月一七日以降、自ら、また、原告所有のアパートの管理業務を担当していた有限会社美奈川不動産代表者皆川英久や、田中不動産株式会社営業担当社員藤田寛之を通じて、再三、原告及びその代理人である関澤弁護士に本件借地権譲渡の承諾を求めていたことが認められる。

しかしながら、被告が原告ないし関澤弁護士から、本件借地権譲渡の承諾を得たと認めるに足りる証拠はなく、被告の抗弁1は理由がない。

三  被告の抗弁2(譲渡許可申立期間の猶予)につき判断する。

借地借家法二〇条三項は、法律関係が長期にわたり不確定な状態にあることを避けるため、第三者が借地上の建物を競売・公売で取得した場合、賃貸人の借地権譲渡承諾に代わる裁判所の許可を求める申立ての期間を、競落人が建物の代金を支払った後二か月以内に限ると規定している。したがって、右期間は当事者が任意に伸長したり猶予を与えたりすることはできないと解すべきであり、被告の右主張は主張自体失当である。

なお、甲第七号証及び被告代表者本人尋問の結果によれば、被告代表者は、平成七年二月頃から何度か関澤弁護士に電話をかけ、本件借地権譲渡の承諾を求めたが、これに対し関澤弁護士は、原告と西尾は本件借地権をめぐり係争中である旨説明したことが認められるが、それ以上に、譲渡許可申立期間の猶予を与えるなどという話をした事実を認めるべき証拠はない。

被告の抗弁2は理由がない。

四  そこで、本訴における被告の抗弁1、2が認められないことを条件とする被告の反訴請求につき判断する。

1  反訴請求の原因1項のうち、被告が譲渡許可申立てをすることなく法定期間が経過したことは当事者に争いがない。

なお、被告は、原告及び関澤弁護士が、本件借地権譲渡の承諾をするがごとき態度を示したため、右申立てを留保していた旨主張するが、被告と原告及び関澤弁護士との本件借地権譲渡の承諾をめぐる交渉の経緯は、右に認定とおりであり、被告の右主張を認めるに足りる証拠はない。

2  被告の原告に対する不当利得返還請求権が成立するか否かにつき判断する。

(一) 借地借家法二〇条一項は、第三者が借地上の建物を競売または公売により取得した場合で、右競落人が借地権を取得しても賃貸人に不利となるおそれがないにもかかわらず、賃貸人が借地権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は右競落人の申立てにより賃貸人の承諾に代わる許可を与えることができると規定している。

そして、同条三項は、右申立期間を建物競落の後二か月に限定している。

したがって、競落人が右期間を徒過した場合、競落人は借地権付建物として競落したにもかかわらず、結局賃貸人に対抗しうる借地権を取得できないことになり、反面、賃貸人は借地権の負担を免れることになる。

(二) しかし、競落人が譲渡許可申立てをしても、裁判所が許可するには、右競落人が借地権を取得しても賃貸人に不利になるおそれがない場合という条件が課されており、申立てをすれば必ず許可が得られるという制度ではない。

仮に、右申立期間を徒過した競落人が賃貸人に借地権相当額を不当利得として返還請求できるとすれば、右競落人は本来借地権の無断譲受人の立場であるにもかかわらず、事実上賃貸人に借地権の買取りを強制できることとなり、当事者間の利害の調整のため種々の方策(裁判所は借地条件の変更や財産上の給付を命ずることにより当事者間の公平を図り、また、賃貸人は自ら希望する場合は、相当の対価により借地権を買い取ることができる。同法二〇条一項、二項、一九条三項)を盛り込んだ右制度の趣旨を没却することになる。

さらに、借地借家法一四条は、第三者が借地上の建物を取得した場合において、賃貸人が借地権の譲渡を承諾しない場合(本件のように、譲渡許可申立を徒過した場合も含む。)は、第三者は賃貸人に対し、建物を時価で買い取ることを請求できる旨規定して、一定の範囲で右第三者の保護を図っている。

(三) 以上によれば、競落人に対する借地権の譲渡は、賃貸人の承諾があるか承諾に代わる裁判所の許可がなされない限り、賃貸人との関係では権利性が認められないというべきであり、競落人において申立期間を徒過して譲渡許可の申立てをしなかった以上は、その後の利益調整については建物買取請求権の行使によって図られるべきというべきである。

したがって、譲渡許可申立期間を徒過したことのみにより、被告が直ちに法的に保護されるべき経済的損失を被ったものとは評価できず、原告がそれにより何らかの利益を得るとしても、それは競落人が右申立手続をとらなかったことによるいわば反射的な利益とみるべきで、不当な利得と評価することはできない。

3  右のとおりであって、被告の反訴請求は理由がない。

四  そこで、被告の、本訴における抗弁1、2及び反訴請求が認められないことを条件とする本訴の抗弁3(建物買取請求権行使による同時履行)につき判断する。

1  被告が平成一〇年四月二〇日の本件口頭弁論期日において、被告の本訴における抗弁1、2及び反訴請求がいずれも認めらないことを条件として、本件建物買取請求の意思表示をしたことは、本件記録上明らかであり、被告の右抗弁1、2及び反訴請求が認められないことは、右説示のとおりである。

2  本件建物の買取代金額について判断する。

(一) 建物自体の価格

乙第一七号証によれば、当庁平成四年(ケ)第二四四二号競売事件における評価人堀喜直作成の平成六年七月一四日付評価書における本件建物の評価額は、再調達原価一平方メートルあたり一五万円、現価率〇・三六(平成六年時点での経済的残存耐用年数約一八年、経過年数約一二年、観察減価率四〇パーセントとして算定)とした上で、約五七五万円と算定されていることが認められる。右を本件買取請求がなされた平成一〇年四月二〇日の時点に置き換えて計算すると、現価率(乙第一七号証の五頁の算定方法による)は〇・二八となり、本件建物の評価額は四四七万円と算定される。これと弁論の全趣旨によれば、右価格をもって、本件建物自体の価格とみるのが相当と判断される。

(一五万円×〇・二八×一〇六・四九(延べ床面積)=四四七万円(一万円未満切り捨て))

(二) 建物修繕費用

被告は、本件建物に二七六万八三五〇円の費用を投じて建物を修繕したと主張し、右費用も本件建物時価相当額に算入して買取請求をしている。

しかし、被告は、本件借地権譲渡の承諾を得ないまま右修繕を行ったのであるから、譲渡の承諾の得られない場合の危険は自ら負担すべきであり、また、原告においても、借地権譲渡後の予想しない価格の増加を負担すべき理由はないというべきである。

したがって、被告は、修繕工事が本件建物の維持保存に必要である場合を除き、本件建物を譲受当時の原状に回復するか、工事による増加価格を放棄した上でなければ買取請求権を行使できないというべきである。

しかるところ、被告のなした修繕工事が本件建物の維持保全に必要であったことを認めるに足りる証拠はない。

この場合、被告の本件における主張の合理的解釈としては、修繕工事による増加価格分を放棄して本件建物買取請求権を行使しているものと解するのが相当である。

したがって、本件建物自体の価格には右修繕費用は考慮しないこととする。

(三) 借家権の存在による負担控除

抗弁3(四)の事実及び千田の借家権が原告に対抗しうるものであることは当事者間に争いがない。そうすると、本件建物買取代金の算定にあたっては、右借家権の存在による負担を控除することとなる。

右借家の賃料は一か月一八万円であり、現在の本件土地の借地料よりも相当高額であること、敷金が三六万円であること、法定更新により期間の定めのないものとなっていることなど、本件に顕れた一切の事情に照らすと、右借家権の存在による負担として六七万円を控除し、これを控除した本件建物の価格は、三八〇万円と認めるのが相当である。

(四) 本件建物の場所的利益

乙第一七号証によれば、本件土地の平成六年当時の更地価格は二七五五万二七〇〇円(一平方メートル当たり二四万五〇〇〇円×一一二・四六平方メートル)と評価されており、乙第一八号証によれば、本件土地の平成一〇年度固定資産評価額は二七七一万八五三〇円であることが認められる。また、乙第一七号証によれば、本件建物はJR総武線小岩駅の東南約五〇〇メートルに位置し、住居地域、準防火地域、第三種高度地区、日影規制第二種の一般住宅地域内に存する居宅であり、日照、通風、乾湿等は普通程度で、上下水道、都市ガスが整備されていることが認められる。

右土地価格、場所的事情及び弁論の全趣旨を総合考慮すると、本件建物の所在場所による利益は、右土地価格の約一割に相当する二八〇万円と認めるのが相当である。

(五) 以上によれば、本件建物買取価格は、借家権の存在による負担を控除した本件建物価格三八〇万円に、場所的利益二八〇万円を加えた六六〇万円となる。

(六) 土地所有者からの建物収去土地明渡しを求める請求に対して、買取請求権が行使された場合に、買取請求権者が建物の間接占有を有するにすぎないときは、右請求は建物の指図による占有転移を求める趣旨をも含むと解すべきであるから、建物買取請求権を行使する者は、右建物に対抗力を有する借家人がいる場合は、買取代金の支払いを受けるのと引換えに建物の占有権を譲渡する旨の意思表示を行い、かつ借家人に対しては、以後土地賃貸人のために建物を占有すべき旨を通知する義務を負うというべきである。

(七) よって、本件においては、被告は、原告から六六〇万円の支払いを受けるのと引換えに、原告に対し本件建物の占有権を譲渡する旨の意思表示をし、かつ千田に対し以後原告のために本件建物を占有すべき旨を通知する義務を負うことになる。

六  原告の賃料相当損害金の請求について

被告は、平成七年九月二五日に本件建物の所有権を取得した後、本件建物を所有して本件土地を占有していたことにより、原告に対し、本件土地の賃料相当額の損害を与え、また、平成一〇年四月二〇日の建物買取請求権行使後も、本件建物を千田に使用させることにより本件土地を占有・利用して右賃料相当額を不当に利得しているから、被告は原告に対し、本件建物を引渡し、本件土地を明渡すまで、右賃料相当損害金・不当利得金の支払義務を負うべきものである(なお、原告の不法行為による賃料相当損害金の支払請求には、建物買取請求権が行使された場合の賃料相当額の不当利得返還請求をも含むものと解される。)。

七  結論

以上によれば、原告の本訴請求は、本件建物買取代金六六〇万円の支払いと引換えに、指図による占有移転の方法による本件建物の引渡し(本件建物の占有権を原告に譲渡する旨の意思表示及び千田に対する以後原告のために本件建物を占有すべき旨の通知)を求め、かつ平成七年九月二五日から右引渡しまで一か月二万五一二〇円の割合の賃料相当損害金・不当利得金の支払いを求める限度で理由があり、その余の本訴請求は理由がなく、かつ被告の反訴請求は理由がない。

よって、原告の本訴請求を右の限度で認容し、被告の反訴請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 坂本慶一 裁判官 田中寿生 裁判官 松井修)

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